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投稿日:2010/09/26(日) 16 28 21 香りのいい紅茶を楽しみながら、特に何をするということもなく、 私たちはいつもの放課後を過ごしていた。 仮にも軽音部という看板を掲げている以上、差し迫った目標が無くとも練習するのが 当然なのだけれど、お茶の合間に気が向いたら練習という毎日に、 いつの間にか身体が慣れてしまっている。特に今日は、普段から率先して練習に励む梓が、 クラスの用事か何かで、まだ部室に顔を見せていない。つまり、だらけた雰囲気に 歯止めを掛ける人間がいないのだ。故に、常にフリーダムな律や唯はもちろん、 それを諫める役目などとっくに放棄したムギと私までもが、楽器にさわりもせず、 各自思い思いに時間を費やしている、というわけだ。 律は持ってきた雑誌を読むのに夢中らしい。唯はといえば、鏡や手帳やその他の小物を、 出したり片付けたり並べたりぶちまけたり、私には意味不明に見える作業に没頭していて、 部室の中はそこそこ静かだ。私は、ちょうど書きかけの詞があったことを思い出し、 今のうちに書けるなら書いておこうと、取り出したノートを広げている。 なんとなく書けそうな気はするものの、ぴったりのフレーズを探しきれずに ひとり悶々としてきた頃、お茶のお代わりの準備にムギが席を立った。その動きにつられたのか、 手を止めて入り口の方を見ていた唯が呟く。 「あずにゃん遅いね。今日はもう来ないのかなあ?」 「そのうち来るだろ? ああ見えても、お茶とお菓子大好き人間だからな、梓は」 雑誌から顔も上げずに返答する律に、「それはそうだけど」と曖昧に微笑みながら、 唯は頬杖を突いた。あ、なんか浮かびそう。イメージ通りの言葉の欠片が、 すぐそこまで降りてきてる。私は、気合いを入れ直すべく、カップに残った紅茶を飲み干そうとした。 と、そのとき、おもむろに私の方を見て、唯が言ったのだ。 「ねえ澪ちゃん、――恋ってどういうものなの?」 「ぶーーーーっ!!」 口に含んだ紅茶も、手が届きそうだった詞の欠片も、すべてが一瞬にして飛び散った。 私の正面にいた律は、「きたねーな、おい」と、呆れて自分の顔にかかった紅茶を拭っている。 ごめん律、悪気は無かったんだ。 「で、どうしたんだ唯、いきなり。澪に恋愛相談でもしたいのか?」 律が話を向けると、小首を傾げて唯は、 「んー、だって澪ちゃん、かわいい詞とかいっぱい書いてるでしょ? その澪ちゃんを、 恋愛のエクスポートと見込んで、相談したいことがあるんだー」 エクスポートって何だエクスポートって。それを言うならエキスパートだろ、輸出してどうする。 「ていうか、唯、確認なんだけど」 ようやく、お茶と歌詞の噴出ショックから立ち直った私は言った。 「もしかして私をからかうために聞いてるのか? それとも本気で?」 「からかうつもりなんかないよ? 私の周りにいる人では、澪ちゃんが 1番恋愛関係に詳しそうだから、いろいろ聞いてみたかったんだけど……」 そこで律が、余計な茶々を入れてきた。 「唯、おまえ全然わかってないなあ。澪はこう見えても、恋愛経験なんかないんだぞ? だから、相談しても参考になる答えなんか返ってこないぞ?」 何を知った風な口を利いているのか、いつものことながら呆れてしまう。 律だって、恋愛経験なんか今までないくせに。 「唯、律の言うことなんか真に受けるなよ?」 軽く律を睨んだあと、私は唯に向き直り、 「場所変えるか? ここじゃ、誰とは言わないが邪魔が入りそうだからな」 有効なアドバイスができるかどうかはともかく、もし唯が真剣に何かを相談したいのなら、 こちらも真剣に応えないと失礼だ。それに、恋愛話に関するなら尚更、ここではやりにくい。 ちょうどムギが戻ってきたので、唯と話があるからと簡単に事情を告げ、ついでに、 律が邪魔しに来ないよう見張り役もいっしょに頼む。ふたつ返事で引き受けてくれたムギに 感謝しつつ、私たちはゆっくり話せる場所を求めて部室を出た。 実は律よりもムギの方が興味津々な顔をしていたという事実には、気付かなかったことにしておこう。 ■ 帰宅部組が残っているかと思ったけれど、3年2組の教室は無人だった。 内緒の話をするには好都合だ。 唯は自分の席に、その前の和の席に私が座り、取りあえず話を聞く体勢を取る。 「で、唯はどういうことを知りたいんだ? もしかして、……誰かに恋した、とか?」 「うーん、それがわかんないから澪ちゃんに聞きたかったんだよぅ」 迷子の子供のような情けない顔をしている唯がおかしくて、私はつい吹き出しそうになる。 なるほど。つまり、誰か気になる人が現れたのだが、それが恋と呼べる感情かどうか わからない、というところか。おいしいものとかわいいものが大好きで、 年令相応の浮いた話なんて唯には無縁だと思っていただけに、驚くというよりは 感慨の方が大きい。そうか、唯も立派に成長したんだ。 「そうだなあ。初めのうちは、恋かどうかなんて意識する必要ないんじゃないか? 私の場合は、その人に対する『好き』がどんどん大きくなっていったあとで、 ああこれが恋なんだ、恋に違いない、って思ったけどな」 「あ、やっぱり!」 頼りなさげな顔から瞬時に花が咲いたような笑顔に変わった唯が、身を乗り出して私に迫った。 「さっきりっちゃんが、澪ちゃんは恋愛経験ないって言ってたけど、ちゃんとあるんだよね?」 「そりゃあもちろん――」 ある、と言いかけて止まる。私がその人に抱く感情は、私自身は恋と信じて疑わないのだけれど、 世間一般の基準から見れば大きくずれている。だから語尾は曖昧になる。 「と、とにかく今は唯のことだろ」 わざとらしいのは承知の上で、私は話を元に戻した。 「唯自身はどうしたいんだ? その人を好きなことは確かなんだろ?」 「うん、好き。大好きだよ。笑顔とか仕草とか見てるだけで、すっごく食べちゃいたいくらい」 「食べたい……のか?」 まさか唯、人肉に興味があったのか? 神様、さっき「唯も立派に成長したんだ」と思ったことは 撤回します……。 「それとねえ、ずっと抱きついたり頬ずりしていたい、かな?」 「聞いてると、なんだかペットに対する愛情みたいだな」 「ペットかあ。うん、そうだね。強がったりもするけど、実は淋しがり屋な猫みたいな子なんだもん」 その人のことを思い浮かべているのか、唯は、見てる方が幸せになれそうな顔で笑っている。 「けど、猫をかわいがるのと恋とは、ちょっと違うんじゃないか?」 「じゃあ澪ちゃんは、好きな人のことどんな風に思ってたりするの?」 「私か? 私は、そうだなあ……」 目を閉じてその人のことを考えてみる。いつも適当で、強引だったり 子供みたいなところもあったりするけど、私のことは常に気に掛けていてくれる。 私の先に立ったり後押ししたり、憎らしいくらいに私のことがわかっている、 それでいて押しつけがましいわけでもない。 「何かをしてあげたいとかしてほしいとか、全然思わないわけじゃないけど……、 そばにいてくれるだけで満足かな」 「うんうん、それわかるよ。私も、いつもそばにいたいと思うなあ。 いるべき場所にその子がいないだけで不安になっちゃったりするし」 「その人といっしょなら、無理に構えたり虚勢を張ったりする必要なんかないんだ。 何ていうか……そう、私を肯定してくれるんだ、どんなときも。月並みな言い方だけど、 その人がいなかったら今の私はないと思ってるよ」 扉を開くことをためらう私に、世界は怖くなんかないと教えてくれた。 音楽も、音楽を通じて知り合った仲間も、その人の存在なくしては巡り会えなかった。 「だから、いつになるかわからないけど、次は私がその人の役に立てたらいいなって―― いやいやいや、だから、私のことはどうでもいいだろ」 気が付けば、語りすぎた私の顔を、にやにやしながら唯は見ている。 「いいなあ。大人の恋って感じだね、澪ちゃん」 「ち、違うだろ、今は唯の話をするのが目的なんだから。唯は、何かしてあげたいとか 思ったりするのか?」 「私? んー、何ができるかなんて考えたことなかったし、恋かどうかもわかんないのに 偉そうなことは言えないけど……」 虚空を見上げて数秒、唯の笑顔は子供っぽいものから緩やかに変化し、 思い浮かべているであろう人に向かって、愛おしむような視線を向ける。 「私は、壁になりたい、かな。好きな子にはいつでも笑っててほしいから、すぐ近くで、 その子を悲しませるものを跳ね飛ばすような壁になれたらいいな」 一瞬、唯の顔や手足が生えた壁が、「ふんすっ!」と鼻息荒く向かい風に立ち向かう姿を 想像してしまった。そんなシュールな絵も似合う反面、独特の感性で表現される唯の想いは、 春のように柔らかく暖かで、包み込まれる人を幸せにするに違いない。 ――唯、それは紛れもなく恋だよ。 「ねえねえ澪ちゃん、結局、私の『好き』は恋だと思う? 違うかなあ?」 「その答えは、唯のすぐ目の前にあるよ」 私は、既に決まっている私なりの回答を敢えて口にはしなかった。 他人に言われるより、自分で気付いた方がいいに決まってる。 「目の前……」 比喩表現を真面目に受けたのか単なるボケか、唯は視界のごく近いところを 凝視している。そして、さらりと言うのだ。 「澪ちゃんも、想いが通じるといいね」 「……」 私は1度も、自分の恋が片想いだなんて言ってないのに、しっかり唯にはバレているらしい。 まったく、唯の洞察力にはいつも敵わない。 「唯はまず自分のことに専念しろ。……私は、一方通行のままでいいよ」 告白なんてするつもりない。基本的に私を肯定してくれる人だから、想いを伝えても 完全に拒絶することはないだろう。逆に、そんな人だからこそ、私をあからさまに拒絶できずに 思い悩むという、苦しい立場に追いやってしまうだろう。私の大事な人を、 そんな目に遭わせるわけにはいかないのだ。 「澪ちゃん人気あるんだしさあ、片想いなんてもったいないよ? ていうか、 澪ちゃんが好きだってこと、その人もう気付いてるんじゃないのかなあ」 「まさか。いくら余計なとこだけ鋭い律でも、さすがに気付いてな――」 あ。……ちょっと待て。ナニヲイッタノ、ワタシ? 慌てて口を押さえたがもう遅い。 聞こえてしまっただろうか、ごまかすかしらばっくれるか。耳鳴りがしそうなくらい 頭に血が上ったまま恐る恐る唯の方を窺うと、満面の笑みで私を待ち受ける瞳に捉えられた。 「ゆ……い? なんか聞こえたか……?」 「はいっ、しっかりと聞こえましたー」 ……マズい。これは最高にマズい。背筋やこめかみやいろんなところを、 冷や汗が流れていく。 「頼む、唯、律には言わないでくれ。いや、律じゃなくても、誰にも言わないでくれっ」 「別にいいよ? そだよね、どうせなら自分の口でちゃんと言いたいもんね」 「そうじゃなくてっ!」 きょとんとした顔の唯を前に、言いたいこと、言わないといけないことが頭の中で整理できない。 「と、とにかく、律は関係ないんだ。あ、いや、関係ないっていうのは、私が一方的に想ってるだけで、 律はそういう趣味じゃないってことだぞ。だっておかしいだろ、同性が好きだなんて。 律はそんなんじゃないぞ、断じて。私がおかしいだけだからな?」 「澪ちゃん、落ち着いて」 「律に知られたらダメなんだ。今までどおりの友達ではいられなくなるし、もしかしたら、 律までみんなに変な目で見られるかもしれない。だから、頼む――」 「落ち着いてってば」 パニックのスパイラルに巻き込まれた私とは対照的に、唯は緩やかな動作で私の手を握る。 「大丈夫だよ、澪ちゃん。誰にも言わない。約束するよ?」 「……ホントか?」 「うん。それにね、――私も同じだから」 1度、更に力を込めて私の手をギュッと握り、 「そろそろ部室戻ろっか? あんまり遅いと、りっちゃんたち心配するよね」 唯は、私の不安も何もかも包み込むような穏やかな笑みで、私の手を引いて立ち上がった。 ■ 私たちが部室に戻ると、遅れていた梓は既にギターを抱えて練習に励んでいた。 唯を見るなり、「自分だけが練習しないならまだしも、澪先輩まで巻き込んで……」と、 少々ご立腹のようだ。まあ、その程度のお叱りで唯が動じるはずもないが。 唯が誰にも言わないと約束してくれた以上、私はそれを信じるしかないけれど、 そこはやっぱり気になるのが当然で、ベースを持っても練習に身が入らない。 そんな私の様子を見てとったのか、普段よりは早めの時刻に、律が「今日はもう解散!」の号令を発し、 部活終了となった。 ベースを片付けながらも、ついつい唯を気にしてしまう。律にバレては困るのはもちろん、 唯自身も私のことを異常者だと思ったかもしれない。 「あ……れ?」 ふと、さっきは自分がパニクっていたせいで聞き流したやり取りを思い出した。 確か唯は、「私も同じ」だと言ってなかったか? あれはどういう意味だ? 「ほれ、帰るぞ澪」 軽く後頭部を叩かれ我に返った。見れば私以外のみんなは帰り支度を済ませている。 「う、うん。ごめんごめん」 慌てて手早く片付けを済ませ、みんなを追うように私も部室を後にした。 とりとめのない話をしながら歩くみんなから遅れること数歩、私は無言で考えていた。 唯は、私の恋する相手が律だとバレて慌てていたときに言ったのだ。 「私も同じ」だと。ということは、まさか唯も律のことを? 「いやいやいや、それは違うだろ」 そうじゃないとすれば、唯の好きな相手も同性、女の子だということか? そういえば唯は、「実は淋しがり屋な猫みたいな子」と言っていた。今になって考えれば、 その表現は女の子に対する形容である方が無理がない。 では、やはり……そうなのか? 前を行く唯の、華奢な後ろ姿を見つめた。日頃から悩みなんて無さそうな顔をしているのに、 唯は唯なりに、いろいろなものに立ち向かって生きてるのかもしれない。 ――もちろん、実際には何も考えてないという可能性もあるけれど。 いつもの信号で、私たち5人は二手に分かれた。 「また明日なー」 「はい、お疲れ様でした」 明るく手を振る唯たちを見送り、律と私は再び歩き出す。 「で、唯の恋愛相談はうまくいったのか?」 前置きなしに、律が言った。唯と私が部室に戻ってもその話題に触れてこなかったから、 忘れてるんだとばかり思っていたのに、敵はしっかり覚えていたらしい。 「しっかしあの唯がなあ。まあ高3にもなれば色気づいても無理ないか」 「おまえ、おもしろがってるのか真面目に心配してるのか、どっちなんだ?」 「それはもちろん、おもしろがってますわよ?」 口ではいい加減なことを言ってるくせに、いざというときには頼りになる律だから、 唯の恋も実は応援したいのだろう。 「……あ」 しかし、厄介なことがひとつ。もし唯の好きな相手が同性だと知ったら、 それでも律は変わりなく唯のことを応援するだろうか? 嫌ったり仲間はずれにまでは しないにせよ、偏見を持たずに唯を見守ってくれるだろうか? 心持ち足取りが重くなった私は、律の後ろ姿を見つめて歩いた。律なら大丈夫だと思うけれど、 冷静に考えれば、大丈夫と言い切る確証なんてどこにもないのだ。 「澪、どしたー? 唯の相談相手で疲れたのか?」 遅れ気味の歩調に気付いたのか、律は振り向いてこちらを見る。しばらく無言で、 私も律の顔を見つめた。さりげなく私を気に掛けてくれるから、 不安なときはいつも律に頼ってしまうんだ、私は。 「なあ律」 「んー?」 「あのさ、……唯のことなんだけど」 律がどういう反応を見せるか怖くて、私は視線を逸らして言った。 「もし――もし唯の好きな相手が、ホントは好きになっちゃいけない人でも、 律は反対しないか? 唯のこと信じて応援してやれるか?」 「は? なに言ってんだ?」 「だから、唯の相手がどんな人間でも、律は唯を否定したりしないか?」 我ながらわかりにくいと思うけれど、洗いざらい真実をぶちまけるわけにいかず、 結果として質問のピントが曖昧だ。それでも、私は律にすがりたかったのだ。唯を否定しないでと。 そして――これは言ってから気付いたのだが――唯と同じく同性を好きになった私を否定しないでと。 しばらく不得要領な表情で私を見ていた律は、ふっと柔らかな微笑みを見せた後、 勢いよく笑い飛ばした。 「なーにバカなこと言ってんだよ。ほれ、行くぞ」 私の肩をポンポンと叩き、続く動作でそのまま私の手を握る。 「否定なんかするわけねーし? 危なっかしいことばっかしてるけど、ああ見えても唯は、 間違ったことはしないってわかってるさ。それに、相手の方だって十分しっかりしてるしな」 「……そっか」 律に手を引かれ、私もゆっくりと歩き出した。そっか。聞くまでもなかった。 人一倍みんなのことを見てる律が、仲間を否定するわけなんてないんだ。 と、引っ掛かる台詞が律の口から出たことが気になった。 「あれ? 律、唯の相手が誰だか、唯から聞いてるのか?」 「ん? いや、唯からは聞いてないけどな。んなもん、誰でも知ってるだろ? 知らないのは澪と、あとは相手本人だけじゃねーのか?」 え……。そんなに知ってて当然の秘密だったのか? もしかして知らない私がおかしいのか? 「じゃあムギも知ってるのか?」 「そりゃあ知ってるだろうな」 「梓も?」 「あ……?」 虚を突かれたような表情で、律の足が止まる。そして思い切り吹き出して言った。 「あー、梓は知らねーだろな、うん」 何がおかしくてたまらないのか不明だけれど、律は笑いをこらえるのに必死だ。 「なんだ律、『誰でも知ってる』なんて大げさなこと言ったくせに、 梓だって知らないんじゃないか」 「ごめんごめん、まあとにかく、澪が思ってるよりずっと、実はみんな恋をしてるってことさ」 「意味がわからん。っていうか無理にいい話系に持って行こうとしてるだろ?」 私は、呆れた風を装いながら、律の横顔を見た。命短し恋せよ乙女というけれど、 確かに命と比べたら、恋が成就するまでの時間は果てしなく長い。そしてもちろん、 成就するとは限らない。 ――ま、しょうがないか。好きになったのは私の勝手だからな。 取りあえず今は、横に並んで歩けるだけ歩いていこう。それではダメだと自覚したときに初めて、 私の恋は恋と呼べるものになるのかもしれない。 -終- 澪が本当に律の事が好きだっていうのが凄く伝わってきた… -- 名無しさん (2010-12-15 00 36 50) 名前 コメント
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今日は大好きなあいつの誕生日! というわけで、ちょっとしたプレゼントをもってそいつんちに突入したわけだ 「みーおー!」 「ん。どうした?」 どうした?って!まさか忘れてるわけじゃあるまいなー 「これだよ、これこれ!」 これ見よがしに綺麗に包装された箱を見せてやると 「え?なんだそれ」 なんてごまかそうとしちゃってる けど、顔が真っ赤で口調も覚束なくなって・・・ 照れてるのがバレバレなんだなこれ。わかりやすい子でちゅね そんなこんなで澪の部屋にお邪魔して プレゼントを見せてやることにした。 「ほい!じゃあ開けていいぞ」 「うん。その前にお茶入れてくるな」 「何いってんだ!今日は澪の誕生日だぞー!私が入れてくる!」 「そうか?」 澪の家で私がお茶入れるってのもなんか変だけどな。 二人分お茶を用意したらまた澪の部屋に戻り、プレゼント発表のコーナーに戻る 「そいじゃーこのプレゼントをー」 「ちょっと待て・・・律」 「なんだ?」 「んと・・・こっちおいで。」 言われたとおり澪に近づくと、あろうことか私を抱きかかえ膝の上に置きやがった! 私は子供か! 「おいー!なんだー、なにすんだよー!」 「えっとね・・・今日はなんか、律がほしい気分。」 な、なにを言い出すか!自分じゃわからないけど 顔が真っ赤になるような感覚に襲われる 「困るってそんな・・・プレゼント用意したのに」 「ごめんごめん、それじゃ開けて?」 「え?」 「お前を抱きかかえてるから両手ふさがってるの。だから開けて?」 なんだろうこれ・・・澪にあげるプレゼントを、澪の膝の上で私が開けるって 私がもらっちゃったみたいでいささか恥ずかしい。 仕方ないのでそのまま箱の中身 澪の最近はまってるアーティストのアルバム、ピック3枚、んでもって安物だけどペアリングを渡してやった 「結構気の利いたプレゼントだなぁ」 「その鼻にかかる言い方、すなおじゃないねぇ」 「なんだよ?すっごく嬉しいぞ!」 そういって私を抱きしめる手を強めた。 なんというか・・・今日の澪おかしいというか・・・誕生日で舞い上がってるのか? 機嫌良すぎる感じがする 「そうだ、パパが買ってきたケーキ、律も一緒に食べよ!」 「え、いいのかー」 「うん!結構あって三人じゃ食べきれないから!あ、それじゃ・・・」 「このペアリングも付けて・・・律も付けてるか?」 「お、おう!ほれ!」 「おー!これでおそろいだな!じゃ、早く下いこ!」 そういって私の手を引き部屋を後にする・・・ やっぱりおかしいけど、たまにはこういう澪を見てるのも楽しいかな。 彼女が一つ大人になっても、その子供のような笑顔をいつまでも見ていられる 私はきっと幸せ者なんだろーな -------------------------------- 澪ママ「パパ?このケーキちょっとお酒入ってない?」 澪パパ「そういえば確かに・・・弱い人は酔っ払っちゃうかもしれないな。」 澪ママ「澪ちゃん大丈夫かしら」 澪パパ「はは、酔っ払ったってりっちゃんがいるじゃないか。」 澪ママ「それもそうね。うふふ」 おわり 名前 コメント
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8月21日。今日は私の誕生日。 みんなが澪の部屋でパーティーを開いてくれてお開きになった後、私は澪の部屋でみんながくれたプレゼントを眺めていた。 「りつー」 私の後ろで寝転がってるはずの澪の声がする。 「りつってさー」 「んー?」 「私に会えてよかった?」 なんだ?ノロケか?それともめんどくさい病か? ちらりと振り返ると顔をうつぶせにしてる。どうやら後者らしい。 「どゆこと?」 「私は律に会えて本当に、心からよかったと思ってる。神様が私にくれた、最高のプレゼントだって思う」 「律に会えなかったら、人見知りで内向きで、本ばっかり読んでて、外にもほとんど出ない暗い子になったと思う」 「そうか?」 「律のおかげで180度人生を変えられたんだ。ありがとう」 なんともむずがゆい。どう反応したらいいのか分からなくて黙ってると、 「でも」 と続いた。 「律は、私に出会えてよかった?」 とりあえず全部聞こうと思って、黙っておく。 「律は小さなころから明るくて、元気で、友達がいっぱい居て。ムードメーカーで。誰にでも話しかけられて、かっこよかった」 「人を惹きつける力があって、一緒にいたらとても楽しくて。私もすごく楽しくて・・・・・・。 でも、私はそんな律に、何をしてあげられたのかな」 「私が側に居なかったら、違う出会いがあったんじゃないかとか」 「私のせいで・・・我慢したこともあったんじゃないかって」 そこまで言ったところで泣き出した。 やれやれ。ホントめんどくさい。まあ、そこが大好きなんだけど。 「忘れたのかー?好きな子にちょっかい出したって。私から澪に近づいて言ったんだから澪は何にも悪くないじゃん」 「明るくて元気があるのは認めるけどさ、それは澪が側に居てくれたからだし。澪がいなかったらみんなとバンド組めなかったんだぞ?」 「それに、ほら。勉強とか。めっちゃ澪に頼ってたし。受験勉強だって自分のことそっちのけで教えてくれただろ。おかげで一緒の大学行けたんだ。澪には感謝してる。なっ?澪のおかげで私の人生いい事尽くめじゃん?」 澪の背中をさすってやると小さく震えた。 「澪を不安にさせたことは謝る。でも、澪だってそうだぞ?いつも私ばっかり・・・」 そこまで言って気がついた。もしかして・・・。 「もしかして、澪のほうから言ってくれなかったり、シてくれなかったのも・・・・・・」 「・・・・・・律の足手まといになりたくなかった」 マジかよ。別れること考えてたなんて・・・。最低な誕生日だ。 「ちょっと、ほら。起きろ!」 嫌がる澪を無理やり座らせてこちらを向かせる。 「私は澪の側に居たい。誰よりも好きだって言い切れるし守りたいし。それが私の本音だし、夢であって、何を捨てても叶えたいって思ってる。 でも、それが一方通行だったらどうしようもないよ。叶いっこないんだから。 気持ちを聞かせてよ。澪は私のためだったら、私と別れてもいいって思ってるの?」 「ちがう」 大きな瞳からぽろぽろ涙をこぼしながら首を振った。 「ちがうよ。私も律と一緒に居たい。いつまでも、いつまでも。毎晩、そう願って眠ってた。でも、怖かった。ずっと怖かった。女の子同士だもん。もう私たちも大学生だよ?いつまでも社会の目を背けていられるわけにはいかないってわかってる。唯たちが認めてくれても世間はそうじゃないよ。私のせいで律が傷つくかもしれないなんて耐えられないよ」 「耐えられる!」 澪の目を見て叫んだ。必死だった。驚いた彼女の瞳から涙がパッ飛び散った 「澪が側に居てくれたら耐えられる。私を信じろ」 そのまま澪を思いっきり抱き寄せた。いつの間にか汗だくで、彼女の体はすごく熱かった。 「世間知らずの私だけど、この気持ちは絶対に変わらない。澪が好きだ。本気だ。」 届いてよ。一番伝えたい想い、もっと早く伝えなきゃいけなかった想いなんだよ。何度でも言ってやる。 どうして、今日澪がこんなこと言い出したのか、今わかった。 今までのズルズルした関係を清算して、ゼロから考えたかったんだと思う。 文字通り、生まれ変わるかのような。未来に向けて。 背中に手が回った。 「すき・・・大好き、だよ。律。生まれてきてくれて、本当にありがとう」 キスしてるときよりもシてるときよりも、本当の意味で今この瞬間、澪とひとつになれた気がした。 神様。ありがとう。最高のプレゼントをありがとう。 名前 コメント
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「はー…なにやってんだろ」 もう今日だけで数え切れないほどのため息と、繰り返す罪悪感。 今週立て続けに自分の凡ミスのせいで仕事が回らなくなった。 せっかくの週末を喜ぶ気力もなく、来週明け早々取引先に頭を下げに行かないといけない。 「学生時代に戻りたいなぁ」 勉強しなかったら自分に降りかかってきただけなのに、今は職場のみんなと取引先、さらに向こうに広がるお客様にまで広がる、プレッシャー。 アパートに帰る間に一人また一人と同じような背中の会社員たちと別れてく。 いつの間にかすっかり体に馴染んだスーツからぶら下がる鞄には、持ち帰った仕事。片手にはせめてもの慰めで買ったケーキ。 ダメだダメだ。 アパートの階段を登る直前、気合いを入れなおす。家には笑顔で帰るんだ。 「ただいまっ」 「おっかえりー!」 エプロン姿の律がいそいそと迎えてくれて、靴を脱いでる間にかばんを持ってくれた。 「お疲れ様。お風呂温めなおしてくるから休んでて」 「うん」 顔に出さないようにしてたけど、やっぱり律にはバレちゃう。今は律の出来立てのご飯よりも、心を切り替える時間が欲しかった。 湯船に浸かりながら盛大に大きな息を吐きながら、週明けの段取りを考える。これ以上職場の仲間の足を引っ張っちゃダメだ。自分で何とかしないとな。 上司に叱られて、同僚に励まされて…。 ポツッ 誰にも見られてない環境になった途端急に溢れてきた。 浸かっている湯船よりも熱い涙が、頬を伝って落ちていく。 律に聞かれないよう湯船にお湯を足しながら、心の整理をする。 がんばらないと。律のためにも。 誓ったんだ。律が側にいるならがんばれるって。 鏡で目が赤くなってないことを確認して時計を見ると、もう少しで日付が変わる時刻になっていた。今日最後のつもりで大きく息をついてキッチンに戻る。 テーブルに律が突っ伏して寝むたそうにしていた。 「…おっ出てきた」 と、立ち上がってコンロの火をつけようとする。 「いいよいいよ、自分でするよ」 「すぐにできるから」 と、冷蔵庫からタッパーを取り出してくる。 「…先に寝てて良かったのに」 「まだ食べてないもん」 絶句する私にニコッと振り返る。 「澪、ひとりでご飯食べるのさびしいだろ?」 この時、私に起こった感情をどう表現したらいいのかわからない。 どんな慰めや励ましよりも律の言ってくれたその一言が、私の胸をいっぱいにして、涙が止まらなくなった。そんな私を、律がぎゅっと抱きしめてくれた。 「みーおっ。だいじょうぶだよ」 律が愛おしい。おそらく今日始めてかもしれない笑顔を浮かべて私は頷いた。 終 澪には律が必要で律にも澪が必要なんだよねー -- 名無しさん (2012-10-28 16 06 14) 名前 コメント
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投稿日:2010/11/03(水) 16 40 59 律が風邪をひいた。 「今日の練習どうします?」 人一倍、元気で明るい律。 だけど、その実アイツは身体が弱い。 「りっちゃんいないとつまんなーい」 「じゃあ、今日はお休みにした方がいいかしら。澪ちゃんもあんな状態だし」 「今日は澪ちゃん、心ここにあらず! って感じだったもんね」 「唯先輩、その言葉の意味分かって言ってますか?」 「失礼な。それぐらい私にだって分かるもん!」 特に、こんな寒い日。 どこか、心がセンチメンタルになるような、こんな日。 「……結局、中止になっちゃったな」 『澪ちゃん、これりっちゃんに持っていってあげてね』 ―――えっ。みんな来ないのか? 『律先輩にとっての一番の元気の源は澪先輩ですから』 『それに、みんなで行ったらりっちゃんも落ち着けないだろうし』 『澪ちゃん、りっちゃんによろしくー!』 そういえば、一人で帰るのは久しぶりだな。 いつも隣に喧しい奴がいたからな。 そんなことを考えているうちに、目の前には田井中家。 勝手知ったる第二の私の家。そう言っても過言ではないだろう。 けど、親しき仲にも礼儀あり。 お邪魔しまーす。と、一言。 「あれ、澪姉」 「よ、聡。早いな。部活は休みか?」 「ああ、今日は父さん遅いからさ。姉ちゃんの看病をしようと思ってサボってきた」 「そうか。お姉ちゃん思いだな。聡」 「いや……まあ、あんなんでもたった一人の姉ちゃんだしな!」 聡のこういうところはよく姉の律と良く似ている。 正面からの素直な褒め言葉には弱いのだ。 ふふ、何だか微笑ましいよな。 「けど、澪姉が来てくれたなら大丈夫だね。俺、今からでも部活行ってくるよ!」 「ああ。いってらっしゃい」 少しドタバタと忙しなく部活へ行く準備をする聡。 それだけ、部活が好きなんだな、というのが伝わってくる。 でも、そんな部活をサボってでも看病をしようとした聡は、 本当に姉のことが好きなんだろうな。 トントントン……。 階段を静かに上がって、律の部屋の目の前まで来た時。 『みおー?』 どこか気だるそうな、そんな声が聞こえた。 「超能力者か」 「分かるよぉ。澪の足音は」 「……このやり取り、一年前にもやったよな」 「んー?忘れた」 「おい」 まだ体調が本調子じゃないせいか、重たそうな瞼を半開きにしながら、 疲れの抜けていない表情をしていた。 「よく寝れたか?」 「……いや、少しも寝れなかった」 ……そんなことだろうと思ったよ。 それから少し、他愛のない話をした。 「みんな心配してたぞ」 「ん、そっか。悪いことしたな」 「だから、しっかり寝て早く治せよ。今日、泊まってってやるから」 「……みおー?」 「ん?」 「へへ、呼んだだけ」 「りつ、」 「なに?」 「呼んだだけ」 「……へへへ、そっか」 「そうなの」 「……なあ、澪?」 「何だ?」 「……キス、して」 い、いきなり何を! 「あ、風邪移っちゃうかもだから、今のなし! 忘れてくれ!」 「……」 「み、みお? んっ…」 「これでいいか?」 「お…おう。ばかみお…」 リクエストに応えてやったのに、馬鹿と何だ、馬鹿とは。 わ、私だって恥ずかしいんだぞ。ばかりつ。 「さ、キスしてやったんだから少し寝なさい」 「へへ、澪、お母さんみたい」 「……馬鹿なこと言ってないで寝ろ」 「はーい、澪お母さん」 「ばか」 「ん、ちょっと寝るわ」 「そうか、おやすみ」 「おやすみー」 数分もしないうちに、すうすうと静かな寝息。 くしゃ、とカチューシャのない前髪を撫でる。 甘えたい時には、甘えて、寂しい時には、私を頼ってくれよ。 りつ、そこがお前の悪い癖だ。自分の弱いところは見せない。 起きたら、少し叱ってやらなきゃな。 「………ん…、み、お」 寝言、か。 ったく、ばかりつ。 さて、夕食の準備でもしますか。 ……あ、そうそう、言い忘れてたよ。 律―――。 「あいしてる」 名前 コメント
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「私に手紙?」 滅多に来ることの無い私宛の手紙、誰かと不思議に思いながら差出人を確認すると相手は…… 「澪が結婚?!」 _______ _____ __ 大学を卒業してからは滅多に澪とは連絡をとらなくなった というより澪が私を避け続けていたのだ。それまではまるで家族の様に一緒だったのに…… それぞれの人生というものがあるのはわかるし、子供みたいにいつまでも一緒に遊ぶわけにもいかない。しかし別に全く会わなくなる必要だってないだろう? そう思った私は熱心に澪に連絡を取り続けたが返事は空しいものだった まぁ私は自分でも少し子供っぽいところがあるのを自覚しているし、いい加減愛想を尽かされたってことかと勝手に納得をしていたけど いや納得なんてものじゃなくて、澪のいない生活に慣れるにはだいぶ時間がかかった 「っていうか澪に嫌われたショックで長い間何もせずに引きこもってたな…」 大学卒業からの数年間を思い出し苦笑いしてしまう そんな澪から急に連絡がきたと思ったら…… _______ _____ __ 「はぁ……澪もついに結婚か……」 別にいつかはこうなると覚悟はしていたが実際に前にしてみるとなかなか寂しいものがある 「結婚式のお知らせねぇ」 私は顔を出していいのだろうか?まぁ、来てほしくなかったらそもそも手紙なんて出さないだろうけど……いやでも社交辞令ってのも……あ、澪も綺麗になったなぁ…… なんてくだらない思考を、プリントされた写真と文章を眺めながら巡らせていると 「あれ……なんだこりゃ」 プリントされた文字とは別に、はがきの隅の方に書きなぐられた手書きの文字を発見した 「日にちと……これは……」 ______ ____ __ 私たちの人生のピークともいえるのだろうか。輝いていた高校時代によく利用していた喫茶店を前にしてノスタルジーな気持ちに浸る 「はぁ……あの頃は、まだ澪と楽しくやっていたよなぁ…」 私の勘違いじゃなければこの時間にここってことなんだけどなぁ 店の中をガラスからのぞいてもまだ澪はいないみたいだけど…… 「りつ」 「!!」 急に後ろから声をかけられてびっくりしてしまうと同時に胸が高鳴っていく この懐かしい声。口の中が急に乾きだして、喉のあたりに熱いものがこみ上げてくる ゆっくりと振り返るとそこには… 「みお……」 「久しぶりだな、りつ」 「みお!今までどうして……」 「ここじゃ寒いし、とりあえず中に入ろう?」 私の言葉をさえぎるようにして澪はそういい、店内の入って行った もう5年ぶりりだろうか?久しぶりに見た澪は相変わらず、いや、ますます魅力的な女性になっていた 20代も後半に入ろうというのに、相変わらず綺麗な肌、髪、そして愛らしい顔をしていた 幼馴染の私でさえ、見つめられれば思わず顔をそらしてしまうくらいに 澪についていき、店内の奥の方のテーブル席に座った ここの喫茶店は昔とかわらず落ち着いた雰囲気で、学校帰りの高校生達で今も賑わっていることだろう 茶色や黒のシックな色で〆られた店内はいるものをおちつかせ、また背伸びしたがりのマセガキどもに昔から人気だった 今は平日の早い時間なので店内は閑散としているが、しかし人混みが苦手な澪にとって、これは狙い通りの事だったのかもしれない _______ ____ __ 運ばれてきたコーヒーを2,3口すすり、冬風に切りつけられていた体が落ち着いた頃、私はしゃべり始めた 「今日は来てくれてありがとう。りつ」 「……」 「大学卒業以来、りつにはひどいことしちゃったから。もう会えないと思ってた」 当然のことだ。私はそれまで長い事付き合ってた親友を突然突き放し、拒絶した 今日の待ち合わせは駄目はもともとでしたことだったが、来てくれた律には感謝してもしきれない 「……いつだって行くよ」 「え?」 「みおが私の事を呼んだら、いつだって行くよ」 「りつ……」 うつむきながらそう言ってくれた律に思わず涙がこぼれそうになってしまったけど、なんとか我慢して話を続ける 「結婚するんだって?」 「うん……そうなんだけど……」 「けど?」 「……」 言葉を詰まらせる私をせかすでもなく、じっと、ただ待ち続けてるりつに感謝する 昔からそうだ。私の事を私以上に知っていて、私の困ってる時にいつでも助けてくれる 私の親友で、私の……初恋の人 数年ぶりに会う律は、昔と違って少し落ち着いた雰囲気がかっこいい大人の女性になっていた けど、それでも律は律で一緒にいるだけで私に安心を与えた _______ _____ __ 口を詰まらせた澪に、質問を変えて言葉を投げかける 「じゃあ、質問を変えるよ。なんで私の事避け続けたの?嫌いになっちゃった?」 「りつを嫌いになるなんてありえないよ」 「じゃあなんで?!私がどんなにさみしい思いをしたか……」 そういいながら澪を見てはっとしてしまう 「………りっ……りつが好きだからっ…」 「りつが大好きだからっ…」 涙を流しながらそう私に訴えた澪を、やさしく抱きしめ。落ち着くまで頭を撫でてやった ………全く、店内に人がいなくてよかった ないと、 -- バッジョ (2011-01-11 03 46 52) 名前 コメント
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澪「うーん…この問題はちょっと難しいなぁ…」カリカリ ダーリンダーリン ココロノー♪ 澪「っと…電話」スッ 着信『お義母様』トビラヲー コワシテヨー♪ 澪「おばさん?どうしたんだろ…はい、澪ですが…」 律母『澪ちゃん!大変!』 澪「わあっ!どど、どうされましたかぁっ!?」 律母『り、律が!』 澪「!?律がどうしたんですかぁ!?」ガタァッ 律母『お、女の子連れ込んでるのよ!それも綺麗な子!眼鏡の!』 澪「!?」 律母『ど、どうしましょ!澪ちゃーん…あのバカ娘…バカだとは思ってたけど、ま、まさか不倫するとは…』 澪「とりあえずそっち向かいます」スッ 律母『う…うん…』 田井中家 律母「い、いらっしゃい…(やべぇ、怖い)」 澪「…ちょっと五月蝿くなるかもしれません」トントントン 律母「…あははは(あ、パンツ見えた)」 律部屋前 澪「…」スッ 『うがぁぁぁ!無理!無理ィィ!』 澪「」ビクッ 『ちょっと律…こんなのじゃ…いけないわ』 澪「!?(イけないだと!?)」 『だってさぁ…私の…じゃ無理だよ…』 澪「(私のなんだよバカ律うう!)」 『ほら、いいからはやく…しなさい』 澪「!?」ガチャッ 澪「ばかのどかぁ!律は私のだっ!」ブワッ 和律「(゜Д゜)」ポカーン 澪「へ?…それ…テキスト?」 和「え、ええ。律が勉強見てくれって…ねぇ?」 律「お…おう…澪にばっかり世話になってるし…和に英語を…」 澪「あっ…」 『ちょっと律…こんなのじゃN女にはいけないわ…』 『だってさぁ…私のアタマじゃ無理だよ…』 『ほら、いいからはやく訳しなさい』 澪「…!?」 和「ところで澪…律は私のって?」ニヤ 澪「…///」 律「…///」 和「…じゃあ私家かえるね」ニヤニヤ 律「あ…ああ!ありがと!」 澪「」 バタン 律「…」 澪「…///」 律「…///」 「お義母様」ってwwww -- 名無しさん (2011-05-07 09 47 16) 和のニヤニヤした顔見たいなぁ -- アクティブ (2012-03-10 12 56 10) 浮気じゃなくて不倫なんだ(●´∀`●笑) -- 名無しさん (2012-07-23 06 29 08) 名前 コメント
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唯「ねーねー澪ちゃん、今週末にね、東京マラソンがあるらしいよ。マラソン得意そうだったし出てみれば?」 澪「唯、あれは事前に申し込みとかあって抽選はとっくに終わってるんだ。それに目立つじゃないか・・」 唯「そうなんだ。ざんね~ん」 律「最近ウォーキングブームだったろ。ダイエットも兼ねて走ろうってんで、澪とお揃いのウェアとシューズとリストバンドを揃えたんだよ。でもまだ使ってないし、澪出てみればよかったのにな~」 澪「あとスポーツブラとショーツもな。でもちょっと恥ずかしいからまだ部屋で二人で着てみただけなんだ//」 律「だから部屋で何度もペアルックで楽しむ方が恥ずかしいって言ってるだろ!」 紬「あ、あの!私!チャリティー枠で二人ともマラソン申し込みました!だからその、全身ペアルックを見せて欲しいの//出きれば下着も!」 澪律「町中で何をさせる気だ!」 律「ちょっと待てよ紬、マラソンは明後日だぞ?何で今まで言わなかった!?」 紬「ごめんなさい・・・(今から出場枠を用意するなんて言えない・・)」 律「まあ、今更言っても仕方ない。澪、今から特訓するぞ!」 澪「め、目立たない為の特訓か?」 律「まあそれでもいい。澪は普通に運動神経いいからな。まずは中間の集団に混じって完走するのを目指そうぜ。」 唯「はい!そしたら澪ちゃんにはハンデが必要だと思います!この前は走りながら歌をうたっのが結構きつかったよね~」 澪「じゃあ、律と二人で話しながら走るとか?2時間だろ。何から話せばいいのかな・・」 紬「好きから始めればいいじゃない!」 律「澪、2時間だと世界記録だぞ~」 唯「楽しい事を考えてぼんやり走るとか!」 澪「まあ、普通に駆けてくる律を見てれば・・」 紬「幸せよね!!」 律「無理矢理冬の日につなげなくてもいいぞ~」 律「まあ、とにかくだ。時間もないからな。澪、早く帰ってウエアに着替えて特訓しようぜ!」 澪「あ、じゃあ今日はウチでいいかな、夜まで一人なんだ」 律「///よし、ウエアとかの着替え持ったら澪んちいくな~」 梓「えっと、マラソンの特訓ですよね?なんで二人で着替える必要があるんですか?」 紬「今日はって事はもしかして毎日?」 唯「ランナーズハイに入った二人はとまらないらしいよ~」 名前 コメント
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「カレー食べたい」 膝の上に乗せた雑誌をパラパラと捲りながら律は呟いた。 小さな呟きだったが隣でテレビのチャンネルを変えつつぼんやりしていた私の耳にはしっかりと届いた。 しかし……カレーかあ、それはまた。 「唐突だな」 「食べたいって思ったんだからしょうがないだろ」 まあ何か食べたいって考えは割と唐突に浮かぶものだからなあ。 それに律のカレーは美味しいし、いいかなあ。 何カレーにするんだろうなあ。 甘口がいいなあ。 未だ頭はぼんやりとしていて、うまく頭が回らない。 今日はそういう日なんだろう。仕方がない。 そんなよく分からない理論も簡単に納得出来る。 それくらい、何もしたくない気分だった。 「澪、作って」 ぼんやりし過ぎて今にも寝そうな私の脳みそが、律の一言で急に冴えてくる。 「えっ……私が作るの」 「ん」 驚きの表情を律に向ければ、満面な笑みが返ってくる。 いやいや、なんで私がそんなことしないといけないの。 「やだ」 「なーんでさ」 「律が作ればいいだろ」 「『澪が作った』カレーが食べたいんだよ」 なんだそれは。カレーなんて誰が作っても……いや、律が作ったのはママのよりも好きだしなあ。 それに私が作るより律が作ったほうが美味しいしなあ。 ……ああ、そっか。 「じゃあ私は『律が作った』カレーが食べたい」 「……そうきたか」 ふふふ、今日の私は一味違うんだ。何もしたくないことに全力だからな。 ……自分で考えてて意味が分からない。 「甘口でよろしく」 更に追い打ちとばかりに一言添えれば、律は諦めたように笑った。 「……しょうがないな」 うん。しょうがないんだよ。今日に限っては。 「楽しみにしてる」 「お、おー。りっちゃんシェフに任せとけ!」 私の言葉におチャラけた口調で返事をしつつも、律は照れたように笑っていた。 何でだろうとぼんやり眺めていると、その視線に気づいた律が口を開く。 「澪が私の作ったご飯食べたいっていうの、珍しいよな」 それがなんか、すっげー嬉しい。と律は言った。 そうだったっけ。言われてみれば……確かにそうかもしれない。 普段の私はあんまりそういうこと言わないもん。恥ずかしいし。 でも今は、何時もの私じゃないから、言えちゃうんだ。 「律のご飯、好きだよ」 「へへ、そっかそっか」 ……思ったことを言葉にするって大事だなって、律の嬉しそうな顔を見て思った。 だから。 「だから早く作って、お腹すいた」 「…………いい雰囲気が台なしだ!」 思ったことを素直に伝えたら、怒られた。 まあ律も怒りたい気分だったんだなあ、なんてよく分からない理由をつけて納得する。 「はあ。まあいいや……んじゃ、作ってくる」 「ん、いってらっしゃい」 律が台所に行くのを眺めたあと、再びテレビに視線を戻す。 特に見たいものはなかったからリモコンを手に取り、テレビを消す。 なんだか……手持ち無沙汰だ。 律がさっきまで見ていた雑誌をペラペラと捲ってみる。 あれ、これ見たことあるなあ。ため息をつきつつ雑誌を閉じて、意味もなく天井を眺める。 律はまだかなあ。いやでも、さっき作りにいったばっかりだしなあ。 ……お腹すいたなあ。隣に律がいないの、なんか寂しいなあ。 そんなことをぼんやりと考える。 しばらくすると台所の方から、いい匂いがしてきた気がする。 その匂いにアテられたのか、私のお腹がぐぅと鳴ったような気がする。 カレーが出来るまで、あと少し。 律が帰ってくるまで、あと少し。 おわる。 名前 コメント
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始めはちょっと驚かせようと思っただけなんだ。 待っている時間が長くて、各々暇つぶしを始めた頃。 私も本を読んでいて、なんだか飽きてきて。 後ろの方では唯とムギが梓にお菓子を食べさせていて。 いつもの感じで澪にちょっかいを出してやろうと思って、膝枕になるように頭を倒したんだ。 「うおっ……」 頭に澪の太ももの柔らかい感触が広がって、私はちょっと照れ臭くなった。 なんだよ~。とか、 重いじゃんか。とか、 そんな反応が返ってきて、それでおしまいだと思った。 けど、そんな私の頭にそっと何かが触れた。 「……」 それはゆっくりと私の頭を撫でていって、まるでお母さんのような温かさがあった。 「……」 「……」 澪が、私の頭を撫でていた。 なんで? 何、この反応? 怒るわけでもなく、照れるわけでもなく、ただ私の頭を撫でていた。 ……どうしよう。 澪が抵抗してきて、私が意地でも離れなくて、それでいつものように怒られて終わるはずだったのに。 予想外の反応にびっくりして、澪の温かさにドキドキして、もうどうしていいのかわからなかった。 私は仕方なく読んでいた本に目を向けたけど、内容なんて全然入ってこない。 「……」 「……」 ……膝枕って、こんなに気持ちいいんだなぁ。 不覚にもそう思ってしまった。 ……どれくらい経ったんだろう。 私の頭を撫でていた手が止まり、澪がため息をついた。 「重い」 それだけ言うと、澪は私が起きやすいように腕をどかしてくれた。 「……」 澪の太ももから頭を放すと、そっと微笑んでいる顔があった。 なんでそんな顔しているんだろう。 怒りたいなら一発ぐらい殴ってもいいんだぞ? さぁ、来い! 私は今すぐにでもくるであろう鉄拳を受けるため身構えた。 「そりゃっ」 「うおっ……!」 けど、来たのは澪の頭で、そのまま私の膝に乗っかってしまった。 あの澪が。私の膝の上に寝ている。 「重かったぞ」 「う、うん……」 澪が文句を言うけど、そのトーンはどこか嬉しそうな気がして。 うぬぼれているのかなぁ、私……。 「……」 「……」 そして、また無言の時間が過ぎていく……。 しかし、こうも澪にドキドキさせられっぱなしというのは何だか気にくわない。 だから、悪あがきをしてみた。 「澪」 「ん?」 「好きだよ」 「っ……」 下を覗きこんでみると、少しだけほっぺを赤くした澪と目が合った。 ちょっとした達成感に浸って、私はまた本を読み始めた。 だけど……、 「……もう」 それだけ言うと、澪が起き上がってきて私の持っていた本を奪った。 「えっ……?」 それに驚いていると、本に隠れて澪の唇が触れた。 ほんの一瞬だったけど、私の唇にかすかに熱を残して澪は離れた。 「……私も」 照れ気味の笑顔で、澪がそう言った。 ……反則だ。 顔が燃えるように熱くなって、今とっても真っ赤な顔をしているんだなぁと思って恥ずかしくなった。 ……どうやら、私は澪にとことん弱いらしい。 END 名前 コメント